毎年、読んだ本の数を数えている。特別意味はないのだが、結構読んでいるな、とかあんまり読んでいないな、などと考える機会にはなる。
読んでいて、なるほども、あったし、なんだかな〜の本もありました。今回ご紹介するこの本。『ユダヤ人を命懸けで救った人びと』 は、感銘を受けた一書です。
アメリカ合衆国ホロコースト記念委員会がまとめた、ユダヤ人を救った人びと、救われた人々の証言集。
日本語訳は20年以上前に出版社が倒産したため絶版になってしまっていたが、この本を読んだ一人の医師が尽力し、関係各所に働きかけ、2019年に再び日の目を見た。
★★★
パリのアパートの管理人マダム・マリーはユダヤ人を救っただけでなく、戦後.ナチスに協力した人々がさまざまな仕打ちを受けていたとき、ドイツ将校の愛人となっていた若い女性に対しても、「彼女が戦争を起こしたわけではない」と、うまくかくまっていたという。彼女はユダヤ人だから助けたわけではない。目の前に困っている人がいれば、当たり前の事として行動したのだ。
★★★
驚くのはユダヤ人を救った人びとが”普通の人“だったこと。
20年前の本書のタイトルは「思いやる勇気」。本の中で、ホロコーストを生き延びたシュロモ氏は、勇気は一人でいることは決してない、恐怖という連れが常にそばにいる、という。まさに私たちの人生はこの勇気と恐怖の闘いそのものではないか?
そして、正義の行動を生んだ要素の中に、手本の存在があると言う。キング牧師にはガンジーがいた。そして、キングという手本があったから60年代公民権運動を戦う勇気が持てた無名の黒人が多数いた。
ぜひご一読を。
『ユダヤ人を命がけで救った人々』
キャロル・リトナー 河出書房新社
アメリカ合衆国ホロコースト記念委員会顧問。エリ・ウィーゼル人道基金理事長。ニュージャージー州リチャード・ストックトン大学教授。ホロコーストの研究と啓蒙に長年尽力し、国際会議主催、映画制作なども行う。