今、10代・20代の若者が苦しんでいる。

エネルギー資源の高騰、気候変動による農作物不作が続き、値上げが相次ぐ食料品。ウクライナでは戦争が終結しない…。日本の将来はどうなってしまうのか、誰もが不安を抱えて生きているのが今の日本。

日々の暮らしや未来をより良いものにするための行動の一つとなるはずだった参院選2022でも全体投票率52.05%と、世界ランキング147位という低さ。
中でも10代、20代の若者の投票率は34.49%と、海外の若者たちも驚く「政治無関心」。
なぜ政治や選挙に興味が持てないのか?

「どうせ投票しても変わらない」「日本の政治政策がわかりづらい」「どうでもいいから大人が勝手にやって」「投票システムが面倒くさい」「投票所が遠い」などの意見があるようですが、これは教育や広報活動、投票システムの改善でなんとかなりそうです。

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しかし、本当の問題は「苦しんでいる若者たち」の存在です。日本では「自分が生きることで、いっぱいイッパイの若者」が増えています。
今回は、私が出会った若者を支援する「認定NPO法人 D✕P(ディーピー)」の活動から、日本の若者のツライ現実を知っていただきたいと思います。

私が「認定NPO法人 D✕P(Dream times Possibility)(以下、ディーピー)」を知ったのは、ある企業の広報誌を作っていた時、その企業が開催するWebセミナーの報告記事を書くためにセミナーに参加したことがきっかけでした。「10代の孤立」を課題とし、様々な活動で支援するディーピーの存在と、彼らが支援する若者たちの現実を知り驚きました。

2004年イラク人質事件を乗り越えて

ディーピー創業者の一人である今井氏は、2004年「イラク人質事件」の当事者です。
当時高校生だった彼はイラクの子どもたちの医療支援のために紛争地域だったイラクへ渡航。その後、現地の武装勢力に人質として拘束されました。

生死の不安の中、やっと解放され帰国すると今度は「自己責任」の言葉のもと、バッシングを受けました。「頼むから死んでくれ」「税金泥棒」などの罵倒の手紙や電話の数々。突然後ろから頭を殴られることもあったといいます。彼は対人恐怖症になり、2年ほど家に引きこもる日々を過ごしました。
外に出るきっかけは20歳の時。高校時代の担任の先生が大学の願書を持ってきてくれたことでした。

彼は大学に進学し、そこで出会った一人の友人朴基浩(パク キホ)氏が、「否定せず過去に何があっても、目の前にいる今の自分と関わってくれた」ことから、自分の経験を人に語れるようになり、受け入れてくれる周囲の人たちのおかげで、「少しずつ社会ともう一度つながりたい」と思うようになっていったそうです。

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その後、今井氏は、不登校や高校中退等の「いきづらさを抱えた高校生たち」に出会います。彼らは親・先生・友人などから否定された経験をもっており、その姿は、「自己責任」だと社会から否定された今井氏自身の経験とも重なり、「彼らのために何かできることはないか」と考え、朴基浩と共に、2012年、ディーピーを設立しました。

経済困窮、家庭事情などで孤立しやすい10代が頼れる先として、LINE相談「ユキサキチャット」を立上げ、全国からの相談に応じており、現在、登録者は9000名を超えています。
また定時制高校での授業や「居場所事業」も行ない、10代の声を聴いて伝えることを使命に、SNSなどで発信を続けています。
(認定NPO法人 D✕P ホームページより)

目指したい社会は、ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会。

ディーピーが解決したい課題は、10代の孤立。「ユキサキチャット」には若者の苦悩が今日も寄せられています。また、ホームページ内の「D✕P Times」には、10代・20代のナマ声やアンケート調査結果、様々な角度からの提言が掲載されています。

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経済における日本の凋落は新聞や経済誌を読めば誰もが知っていることですが、若者たちの現実は、私が思うより遙かに過酷で「これが今の日本か」と驚きと落胆と恐怖さえ覚えます。例えば、
●親が借金だらけ ●不眠症 ●死にたい気持ちが強くなっている ●学校も家も、居場所がない ●持病持ちで、働く先がない ●引きこもりでも高認をとりたい ●なるべく食費を削ってる ●バイト代、親にとられた ●またリスカ(リストカット)してしまった

さらに、コロナ災禍が若者たちの悩みを広く、深くしてしまいました。
アルバイトをしている人は収入減、食べるものに困っている人も増え、「所持金が5,000円しかなくて、アルバイトがなくなってしまい、親もいないのでどうすればいいか」という声もありました。

ディーピーでは、この切迫した現状を受け、急遽困窮状態の若者に食糧支援を行い、食費や家賃の補助としての現金給付も実施しています。

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今年相次いだ生活必需品の値上げも若者を追い詰めています。
6月にユキサキチャットに登録している13~25歳を対象に「値上げに関する緊急アンケート」を実施し278名から本音が届きました。
その中でも
「生きていくのがやっとで、自分の趣味や楽しみに何も気にせずお金をかけられません。何もするにもお金が必要で、お金がないことでできないことがあまりにも多いと感じます。政治をしている人は、自分たちに生きていて欲しくないと思っているんだろうなと感じます」

愕然としました…。言葉もありません。

しかし、私たち大人は目を背けてはいけないのです。
根本的な解決策は私にはわかりません。

次世代を担う10代の若者たちは可能性のかたまりです。この若者たちを支援するために、一人でも多くの方に「10代の貧困」という日本の現実を知っていただきたい、重要な社会課題として認識していただきたい、解決に向かって何ができるのか考えていただきたい…。今回はそんな思いでコラムを書かせていただきました。長い原稿でごめんなさい!!

のんちゃん

のんちゃん

広告代理店を経て、代理店時代の仲間と広告・イベント・販促の企画と制作会社を立ち上げ、日々動き回るアラ60女子。
元気の素は「できるかできないかじゃなくて、ヤルか、ヤラないかだ!」。