アウシュヴィッツ強制収容所に、8冊だけの秘密の図書館があった。そこで、図書係をしていたチェコ人の14歳の少女ディタの物語。彼女は、禁止されていた本を朝、隠し場所から自分の服に縫いつけた隠しポケットにしまい、先生や生徒に貸し出し、学校が終わると、また隠し場所に戻す。
ディタの見た、アウシュヴィッツの様子が淡々と書かれている。淡々と書かれてはいるが、一つ一つは重い内容。
戦後、主人公は解放され、ブラハに住み、共産政権に追われイスラエルに安住の地を得る。
モデルとなった実在の人物へのインタビューと取材により得た事実に基づく物語。
★★★
別に推理小説ではないので、エピローグを何度も先に読み、また、読み進める。そんな繰り返しでなんとか読めた。
解放後、ディタが英国の看護師の青年から借りた本の背表紙を撫で、本の匂いを嗅ぎ、ページをパラパラめくり、紙の音を楽しむシーンが印象的でした。
本は「バケーションにでかけるもの」と彼女は言うが、本が生きる力を与えていたのか・・・
よく、無人島に行くときに持っていく本、とか新聞の広告に載っているが、この本を読んで、活字の力を信じる心があれば、どんな本でも良いのではないかと思った。
『アウシュヴィッツの図書係』
アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳 集英社
1967年スペインのサラゴサ生まれ。スペインで一番読まれている本の雑誌『Qué Leer(何を読むべきか)』の編集長を20年以上務めた後、本をテーマにした雑誌を創刊するほか、映画雑誌の編集者や日刊紙「エル・ペリオディコ」のテレビガイドのコーディネーターなど、文化ジャーナリズムに携わって20年以上。