かめさんの眼:狩人シリーズ第6作『柩の狩人』

今日ご紹介するのは、大沢在昌(ありまさ)さんの狩人シリーズ第6作『柩の狩人』。

大沢在昌さんは『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞しデビュー。
1979年発行だから、当時23歳。若い!大沢さんと言えば、『新宿鮫』シリーズが代表作。犯罪者に食らいつく姿から「新宿鮫」と呼ばれている新宿警察署の刑事・鮫島が主人公の警察小説だ。
また、吉川英治文学賞を受賞した『海と月の迷路』という長編小説も書いている。これは昭和34年の軍艦島を舞台にした物語で、「昭和34年と言えば、ものの考え方、言葉遣いなどが現代とは大きく異なるので、まるで時代小説を書くような気持ちで書いたので・・苦労もしたかな?」と大沢氏が取材で語っている。
「狩人」シリーズや「新宿鮫」シリーズとは異なり、若い警察官が主人公というわけで他の作品とは異なる執筆の苦労もあったようだが、それは逆に、ファンにとっては別の面白さがあるということかも・・・
と、ちょっと大沢さんが好きなだけに、深追いしました。狩人シリーズに戻ります。

狩人シリーズって?

新宿鮫シリーズは、キャリア警察官であった鮫島が主人公だが、狩人シリーズは、ノンキャリア刑事の佐江を主人公にした警察小説。同じ新宿警察署が舞台。鮫島は礼儀正しい優男だが、佐江は、冴えない中年太りのおじさんだ。その佐江が作品ごとに異なる相棒と組み事件に挑んでいくので、毎回、どんな相棒になるかが楽しみでもある。

今回が狩人シリーズ6作品目だが、シリーズの原点となるのは、『北の狩人』。
「北の国からやってきた謎の男が新宿のアンダーグラウンドを挑発する」と紹介されていて、シリーズ化が納得できるスピード感のある展開が面白いけれど、私自身は個人的に、本から漂ってくる1990年代の新宿の猥雑な感じが好きです。

シリーズは、『砂の狩人』『黒の狩人』、そして、暴対法の施行で変わりゆくヤクザ世界を描いている『雨の狩人』へと続く。『冬の狩人』でちょっと小休止って感じ。

そして、待ちに待った第6作『柩の狩人』というわけです。

第6作「柩の狩人」も一気読み

第6作『柩の狩人』待望の新刊だ。もちろん即購入&初めから一気読み。毎回ジェットコースターに乗っているようでハラハラドキドキ。作品ごとに、常に、刑事・佐江ともう一人の主人公が事件を解決していく。

佐江はアウトローと言っていい刑事で、しかも、やや受け身的。しかし、独自の正義感を持っている。法律を遵守するのが正義で、法律を破るのが悪って、割り切れれば簡単なんでしょうが、そこは、息をしている白と黒と灰色の人間がいる社会。しかも世の中には、グラデーションのかかっているグレーもあるから、厄介。

本の帯によると、「新宿歌舞伎町のビルが崩落。現役刑事、元暴力団員、中華系マフィア、氏名不詳の女・・・・あの日、犠牲者たちは何をしていたのか?真実は、死体だけが知っている。」と、この帯を読んだだけで、今度はどんな事件?とワクワクが広がる。

ビルが崩落し、死者が10人。その内身元の特定できない死者が二人。他に、佐江の後輩刑事・滝の名も。彼は、なぜここにいたのか?何をしていたのか?それで、タイトルが「柩」というわけか・・・
今回の相棒は、元夫の死に疑問を感じていた滝の元妻の秋絵・・・
探っていくうちに18年前の事件につながっていく、なんてところがたまらない大沢さんの魅力。またも、捕まってしまった。

大阪のチョット美味しい情報も

大阪に2週間行っていたので、「インデアンカレー」。「インディアン」じゃなくて「インデアン」。
ネットで調べたら大阪に出店したのが1947年(昭和22年)。第二次世界大戦直後ってこと。そんなに古くからある店なんですね。インドの先生を招いてカレー作りを教わるほど料理が好きだった創業者が、戦後の不景気の中で皆が元気になる美味しいものを出す店を創りたいと立ち上げたそうで、最初からこの個性的な辛さだそうです。大阪へ行ったら、ぜひ味わってください。

出版社:幻冬舎
著者:大沢在昌
1956年名古屋市出身。慶應義塾大学中退。79年『感傷の街角』で第1回小説推理新人賞を受賞しデビュー。86年「深夜曲馬団」で日本冒険小説大賞最優秀短編賞、91年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、94年『無間人形 新宿鮫Ⅳ』で直木賞、04年「パンドラ・アイランド」で柴田錬三郎賞、14年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞等受賞。22年紫綬褒章受章。

かめさん

かめさん

創価大学卒業。学生時代演劇にはまり舞台監督を志す。しかし尊敬する師匠から、舞台監督になるには、まず照明を勉強するようアドバイスを受け、フリーランスとして舞台照明の仕事に携わる。

1985年、有限会社ライトアップを設立。演劇、ダンス、コンサート、イベント、格闘技などの照明を手掛ける。