原田ひ香、最近、お近づきになった作家。
と言っても、本を通して。
最初は『まずはこれ食べて』。
読むと、よだれが出てくる。食べたくなる食事ばかり。
次に『古本食堂』。懐かしの神保町。古本の香りが漂ってくるよう。
1970年神奈川県生まれの作家。
文章を読んで、もっと若い人かと思っていた。
★★★
「あるある」と思うことを、実に的確に・繊細に書いてくれている。
どうして、こう人の心・・・いや、違う。人情、というのでもない。
心の機微、心の襞、心の奥底にあるものを、つかみとれるのか?
そして、静かに、じわじわと攻めてくる。
今、3冊目『ラジオ・ガガガ』を読んでいる。
ラジオにまつわるお話6篇。
1話目の「三匹の子豚」でノックアウト。
涙が止まらない。
私の心の底の底にある「あること」に触れた!
★★★
主人公は川西信子、70歳。
3人の息子がいる。
長男、次男は既に結婚し、次男には子どももいる。
三男は独身。彼女はいる。
信子がケアハウスに入ったところから話は始まる。
信子はラジオ、それも深夜ラジオにはまっている。
それを知っているのは三男の正武だけ。
ある日正武が言う。
「もともと、母さんの脇にいるのは、姉さんだけだしね」
「母さんは、いつもずっと、亡くなった姉さんと話していた。
姉さんしか、自分の中に入れなかった。
ラジオについて話すことで、僕は母さんの近くにいようとしたけど、
少しでも長く母さんとつながっていようとしたけど、
無理だった。」
★★★
そう。同じ。私も同じ。
母の中には、兄しか生きていない。
私もそう感じていた。
兄は21歳で死んだ。交通事故だった。
朝は元気に家を出たのに、夜は、病院の手術室で血だらけになった兄と対面した。
私は17歳。高校3年生。兄は大学3年。
建築家を目指していた。
自分が食べようと用意した料理も、
私が食べたいというと食べさせてくれ、自分の分は改めてつくるような兄だった。
本当に優しい兄で、私は大好きだった。
母が、“紳士”として育てた兄。
母の理想の男性。
母の心の中には兄しか生きていないと、
ずっと感じて生きてきた。
★★★
ある日、ずいぶんとオトナになってから。
突然、母に言われた。
「あなたが私の子どもで本当に良かった。
私は本当に幸せよ。」
涙で曇って運転ができなくなった・・・・
★★
この先が書けなくなっている間に、あっという間に3か月以上たってしまった。
4冊目『ランチ酒』、5冊目『母親からの小包は なぜこんなにダサいのか』
そして『三千円の使いかた』を読了。
いずれもなかなかおススメです。